第二章 光源氏の物語 大宮に玉鬘の事を語る
5. 内大臣、三条宮邸に参上
本文 |
現代語訳 |
君達いとあまた引きつれて入りたまふさま、ものものしう頼もしげなり。丈だちそぞろかにものしたまふに、太さもあひて、いと宿徳に、面もち、歩まひ、大臣といはむに足らひたまへり。 |
ご子息方をたいそう大勢引き連れてお入りになる様子、堂々として頼もしげである。背丈も高くていらっしゃるうえに、肉づきも釣り合って、たいそう落ち着いて威厳があり、お顔つき、歩き方、大臣というに十分でいらっしゃる。 |
葡萄染の御指貫、桜の下襲、いと長うは裾引きて、ゆるゆるとことさらびたる御もてなし、あなきらきらしと見えたまへるに、六条殿は、桜の唐の綺の御直衣、今様色の御衣ひき重ねて、しどけなき大君姿、いよいよたとへむものなし。光こそまさりたまへ、かうしたたかにひきつくろひたまへる御ありさまに、なずらへても見えたまはざりけり。 |
葡萄染の御指貫、桜の下襲、たいそう長く裾を引いて、ゆったりとことさらに振る舞っていらっしゃるのは、ああ何とご立派なとお見えになるが、六条殿は、桜の唐の綺の御直衣、今様色の御衣を重ねて、くつろいだ皇子らしい姿が、ますます喩えようもない。一段と光輝いていらっしゃるが、このようにきちんと衣装を整えていらっしゃるご様子には、比べものにならないお姿であった。 |
君達次々に、いとものきよげなる御仲らひにて、集ひたまへり。藤大納言、春宮大夫など、今は聞こゆる子どもも、皆なり出でつつものしたまふ。おのづから、わざともなきに、おぼえ高くやむごとなき殿上人、蔵人頭、五位の蔵人、近衛の中、少将、弁官など、人柄はなやかにあるべかしき、十余人集ひたまへれば、いかめしう、次々のただ人も多くて、土器あまたたび流れ、皆酔ひになりて、おのおのかう幸ひ人にすぐれたまへる御ありさまを物語にしけり。 |
ご子息たちは次々と、まことに美しいご兄弟で、集まっていらっしゃる。藤大納言、春宮大夫などと、今では申す方のご子息方も、みな大きくなってお供していらっしゃる。自然と、特別ではないが、評判が高く身分の高い殿上人、蔵人頭、五位の蔵人、近衛の中将、少将、弁官など、人柄が派手で立派な、十何人が集まっていらっしゃるので、堂々としていて、それ以下の普通の人も多くいるので、杯が何回も回り、みな酔ってしまって、それぞれがこのように幸福が誰よりも勝れていらっしゃるご境遇を話題にしていた。 |