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竹河

第一章 鬚黒一族の物語 玉鬘と姫君たち    

2. 玉鬘の姫君たちへの縁談   

 

本文

現代語訳

 男君たちは、御元服などして、おのおのおとなびたまひにしかば、殿のおはせでのち、心もとなくあはれなることもあれど、おのづからなり出でたまひぬべかめり。「姫君たちをいかにもてなしたてまつらむ」と、思し乱る。

 男君たちは、ご元服などして、それぞれ成人なさったので、殿がお亡くなりになって後、不安で気の毒なこともあるが、自然と出世なさって行くようである。「姫君たちをどのようにお世話申し上げよう」と、お心を悩ましなさる。

 内裏にも、かならず宮仕への本意深きよしを、大臣の奏しおきたまひければ、おとなびたまひぬらむ年月を推し量らせたまひて、仰せ言絶えずあれど、中宮の、いよいよ並びなくのみなりまさりたまふ御けはひにおされて、皆人無徳にものしたまふめる末に参りて、遥かに目を側められたてまつらむもわづらはしく、また人に劣り、数ならぬさまにて見む、はた、心尽くしなるべきを思ほしたゆたふ。

 帝におかれても、是非とも宮仕えの願いが深い旨を、大臣が奏上なさっていたので、成人なさったであろう年月を御推察あそばして、入内の仰せ言がしきりにあるが、中宮が、ますます並ぶ人のいないようになって行かれる御様子に圧倒されて、誰も彼も無用の人のようでいらっしゃる末席に入内して、遠くから睨まれ申すのも厄介で、また人より劣って、数にも入らない様子なのを世話するのも、はたまた、気苦労であろうことを思案なさっている。

 冷泉院よりは、いとねむごろに思しのたまはせて、尚侍の君の、昔、本意なくて過ぐしたまうし辛さをさへ、とり返し恨みきこえたまうて、

 冷泉院から、たいそう御懇切に御所望あそばして、尚侍の君が、昔、念願叶わずに今までお過ごしになって来た辛さまでを、思い出してお恨み申し上げられて、

 「今は、まいてさだ過ぎ、すさまじきありさまに思ひ捨てたまふとも、うしろやすき親になずらへて、譲りたまへ」

 「今はもう、いっそう年も取って、つまらない様子だとお思い捨てていらっしゃるとも、安心な親と思いなぞらえて、お譲りください」

 と、いとまめやかに聞こえたまひければ、「いかがはあるべきことならむ。みづからのいと口惜しき宿世にて、思ひの外に心づきなしと思されにしが、恥づかしうかたじけなきを、この世の末にや御覧じ直されまし」など定めかねたまふ。

 と、たいそう真面目に申し上げなさったので、「どうしたらよいことだろう。自分自身のまことに残念な運命で、思いの外に気にくわないとお思いあそばされたのが、恥ずかしく恐れ多いことだが、この晩年に御機嫌を直していただけようか」などと決心しかねていらっしゃる。



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