序段.
本文 |
現代語訳 |
語彙 |
つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。 |
することもなく、ものさびしさにまかせて、終日、硯にむかって、心に浮かんでは消えてゆく、つまらないことを、とりとめもなく書きつけていると、我ながら何とも不思議に、もの狂おしい気持がすることではある。 |
つれづれなり【徒然なり】…【形動ナリ】@することもなく手持ちぶさただ。所在ない。Aしんみりと物思いにふけっている。もの寂しくぼんやりしている。 あやし【怪し】【奇し】…【形シク】@不思議だ。神秘的だ。Aおかしい。変だ。Bみなれない。もの珍しい。C異常だ。程度が甚だしい。Dきわめてけしからぬ。不都合だ。E不安だ。気がかりだ。 |
※「あやしうこそ」以下には、書きつけた文章についてではなく、筆者兼好の心境が吐露されている。この表現に、「こそ」という強意の助詞が添えられていることにも留意したい。
1 つれづれなるままに…閑寂で、ものものしい心境がふくまれている。
2 日くらし…日暮らし。一日中。底本・田中本にも濁点をうたない。
3 よしなし事…何の理由・子細もないこと。
4 そこはかとなく…そこであるとはっきりしない意。