32. 檳榔毛は | |
本文 | 現代語訳 |
檳榔毛はのどかにやりたる。いそぎたるはわろく見ゆ。 | 檳榔毛は、のどかにやりたるものだ。急いでゆくのは悪く見える。 |
網代ははしらせたる。人の門の前などよりわたりたるを、ふと見やるほどもなく過ぎて、供の人ばかりはしるを、誰ならんと思ふこそをかしけれ。ゆるゆると久しくゆくはいとわろし。 | 網代車を走らせる。人の門の前などを通過したのを、ふと見やるいとまもなく過ぎて、供の人ばかり走るのを、誰だろうと思うことは、とてもおもしろいことだ。ゆるゆると時間をかけて行くのは大変好ましくないことだ。 |
檳榔毛の車と網代車とを比較評論する。単独に車を説明する分類諸段とは根本的に違う。 1 檳榔毛…毛車ともいう。檳榔(蒲葵、古名アヂマサ)の葉を裂いて屋形や棟をふき覆う。貴人の乗用。 2 網代…網代車。網代(竹・葦・檜などを薄く細く削って斜めに編む)を車箱にはったもの。四、五位以下の乗用で、摂関は略儀や遠出の際に用いる。檳榔毛に比し格式・構造すべて軽い。 3 人の門の前などよりわたりたる…門の前などを通過したのを。 |
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