44. 七月ばかりに
  本文  現代語訳
  七月ばかりに、風いたうふきて、雨などさわがしき日、おほかたいとすずしければ、扇もうちわすれたるに、汗の香すこしかかへたる綿衣のうすきを、いとよくひき着て晝(ひる)寝したるこそをかしけれ。   七月ぐらいに、風がたいそう吹いて、雨などが騒がしき日、大方大変涼しいので、扇もつい忘れてしまって、汗の香りが少し漂っている綿の衣の薄いのを、たいそう見た目よく着て昼寝していることこそ面白い。