46. 細殿に人あまたゐて
本文 |
現代語訳 |
語彙 |
細殿に人あまたゐて、やすからず物などいふに、きよげなるをとこ、小舎人童など、よきつつみ・袋などに、衣どもつつみて、指貫のくくりなどぞみえたる、弓・矢・楯など持てありくに、「たがぞ」と問へば、ついゐて、「なにがし殿の」とていく者はよし。けしきばみ、やさしがりて、「知らず」ともいひ、物もいはでも往ぬる者は、いみじうにくし。 |
細殿に人がたくさんいて、通る人に小うるさく問いかけなどするのに、こぎれいな男、小舎人童などが、よい包み、袋などに、衣類などを包んで、指貫のくくりなども見えている、弓・矢・楯などを持って歩くのに、「誰のお使いか?」と訊けば、膝まずいて「誰それ殿のお使いです」と言っていく者はまあ良い。ようすを作ったり、はずかしがったりして「知らない」と言って物も言わず行ってしまう者はしゃくに障る。 |
やすし【安し】…【形ク】@心が穏やかだ。平穏だ。不安がない。A気軽だ。軽々しい。安っぽい。 |
1 細殿…諸説あるが、廂の間の細く通ったものの称で、そこを仕切って女房の局としたのであろう。
3 よきつつみ・袋など…紫式部日記に「大きやかなる袋つつみどももてちがひ」と見え、いずれも衣服を入れるものの称。つつみは裏をつけ、袋は上指(うわざし)があって紐で口を締めるように作る。
4 ついゐて…「つきゐて」の音便。膝まずいて。