54. 小舎人童
本文 |
現代語訳 |
語彙 |
小舎人童、ちひさくて髪いとうるはしきが、筋さはらかにすこし色なる、聲をかしうて、かしこまりて物などいひたるぞらうらうじき。 |
小舎人童は、小さくて、髪がたいそう癖なく整っており、毛筋がさらっとしていて、すこし光沢のある。また、かわいらしい声でかしこまって物を言うのには、美が行き届いている。 |
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前段と同様生活随想ともいうべき短文。
1 小舎人童…本来は近衛の中将・少将の召し具す童をいうが、転じて一般にこれに類する童をもいったらしい。三巻本以外の諸本「小舎人童は」。
2 うるはしき…髪に癖がなくよく整っているのを「うるはし」として賞でた。「うるはし」は端正の義で今いう美麗の意とは異なる。「うつくし」と混同しないように注意したい。
3 筋さはらかにすこし色なる…毛筋がさらっとしていて、すこし光沢のある。「色なる」は頭髪の美にいう特殊の成語。「すぢ」は三巻本以外の諸本「すそ」。
5 らうらうじき…巧者な感じだ。行き届いた美についていう。