64. 橋は
本文 |
現代語訳 |
語彙 |
橋は あさむづの橋。長柄の橋。あまびこの橋。濱名の橋。一つ橋。うたたねの橋。佐野の舟橋。堀江の橋。かささぎの橋。山すげの橋。をつの浮橋。一すぢ渡したる棚橋、心せばけれど、名を聞くにをかしきなり。 |
橋はと言えば、あさむづの橋。長柄の橋。あまびこの橋。浜名の橋。一つ橋。うたたねの橋。佐野の舟橋。堀江の橋。かささぎの橋。山すげの橋。をつの浮橋。一筋渡した棚橋、一筋では狭い気がするが。名を聞くとこれはもう面白いものである。 |
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1 あさむづの橋…越前国丹生郡。「あさみづ」(浅水)の転か。催馬楽に「あさむづ」という曲がある。
2 長柄の橋…摂津国西成郡。歌枕。
3 あまびこの橋…飛騨という。「あまびこ」は由彦・天人の意。
4 濱名の橋…遠江国浜名郡。歌枕。
5 一つ橋…普通名詞か。古今六帖、三「津の国の難波の浦の一つ橋君をしおもへばあからめもせず」。
6 うたたねの橋…大和国吉野郡か。
7 佐野の舟橋…上野国阿蘇郡。舟を横に並べ板を渡した。
8 堀江の橋…摂津国難波の堀江。
9 かささぎの橋…淮南子に「鳥鵲填河成橋度織女」とあり、七月七日天の川にかささぎが、列ねて織女を渡すと伝えられる。天上にならい宮中でもいう。
10 山すげの橋…下野国日光の神橋か。
11 をつの浮橋…近江国小津または伊勢尾津か。浮橋はいかだや舟を列ねて浮かべ、橋の代りとしたもの。
12 一すぢ渡したる棚橋…万葉集、十一に「天なる一つ棚橋」と見える。棚橋は板を棚のようにかけ渡して橋としたもの。