| 本文 | 現代語訳 |
| ねたきもの 人のもとにこれより遣るも、人の返りごとも、書きてやりつるのち、文字一つ二つ思ひなほしたる。とみの物縫ふに、かしこう縫ひつと思ふに、針をひき拔きつれば、はやくしりを結ばざりけり。また、かへさまに縫ひたるもねたし。 | |
| 南の院におはします頃、「とみの御物なり。誰も誰も、あまたして、時かはさず縫ひてまゐらせよ」とて、賜はせたるに、南面にあつまりて、御衣の片身づつ、誰かとく縫ふと、ちかくもむかはず、縫ふさまも、いと物ぐるほし。命婦の乳母、いととく縫ひはててうち置きつる、ゆだけの片の身を縫ひつるが、そむきざまなるを見つけで、とぢめもしあへず、まどひ置きて立ちぬるが、御背あはすれば、はやくたがひたりけり。わらひののしりて、「はやく、これ縫ひ | |