花宴あらすじ
二月二十日あまり、南殿の花の宴には、探韻を賜わって人々は詩を作った。源氏は春鶯囀を、頭中将は柳花苑を舞った。上達部も色々と舞った。夜には詩の披講があったが、源氏の詩は一段と光っていた。
宴後、二十余日の月が出た。人も少く静かである。酔心地の源氏は、弘徽殿の細殿で、「朧月夜に似るものぞなき」と口ずさんだ女の袖を、偶然に捉えた。女は源氏と知って慌てなかった。後で扇を交換して別れた。翌日、北の陣から里に帰る車があった。それによって、朧月夜の女が、「弘徽殿の女御関係の姫君だ」と知られた。それがもし六の君ならば、「春宮に参る人である」と、源氏は聊か同情したが、忘れられない。
源氏は二条院に帰って、紫上を理想的に育てようと思った。改めて左大臣邸に行き、左大臣と花宴当日の話をした。そこへ頭中将達も来たので、音楽をした。
三月二十余日、右大臣邸に藤の花の宴があった。源氏も招かれていたが、行かなかった。右大臣は残念がって、御子の四位の少将を迎えによこした。源氏は大君姿で行った。夜が更けてから、源氏は相当に酔った風をして、紛れ立った。遂に、几帳越しに朧月夜の手を捉え、声も聞いた。それが「六の君だ」と知られた。