第二章 朱雀院の物語 女三の宮との結婚を承諾
7. 朱雀院、使者を源氏のもとに遣わす
本文 |
現代語訳 |
春宮にも、かかることども聞こし召して、 |
東宮におかれても、このような事をお耳にあそばして、 |
「さし当たりたるただ今のことよりも、後の世の例ともなるべきことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり。人柄よろしとても、ただ人は限りあるを、なほ、しか思し立つことならば、かの六条院にこそ、親ざまに譲りきこえさせたまはめ」 |
「差し当たっての現在のことよりも、後の世の例となるべきのことですから、よくよくお考えあそばさなければならないことです。人柄がまあまあ良いといっても、臣下では限界があるので、やはり、そのようにお考えになられるならば、あの六条院にこそ、親代わりとしてお譲り申し上げあそばしませ」 |
となむ、わざとの御消息とはあらねど、御けしきありけるを、待ち聞かせたまひても、 |
と、特別のお手紙というのではないが、御内意があったのを、お待ち受けお聞きあそばしても、 |
「げに、さることなり。いとよく思しのたまはせたり」 |
「なるほど、おっしゃる通りだ。たいそうよく考えておっしゃったことだ」 |
と、いよいよ御心立たせたまひて、まづ、かの弁してぞ、かつがつ案内伝へきこえさせたまひける。 |
と、ますます御決心をお固めあそばして、まずは、あの弁を使者として、とりあえず事情をお伝え申し上げさせあそばすのであった。 |