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若菜下

第三章 朱雀院の物語 朱雀院の五十賀の計画    

2. 花散里と玉鬘     

 

本文

現代語訳

 夏の御方は、かくとりどりなる御孫扱ひをうらやみて、大将の君の典侍腹の君を、切に迎へてぞかしづきたまふ。いとをかしげにて、心ばへも、ほどよりはされおよすけたれば、大殿の君もらうたがりたまふ。少なき御嗣と思ししかど、末に広ごりて、こなたかなたいと多くなり添ひたまふを、今はただ、これをうつくしみ扱ひたまひてぞ、つれづれも慰めたまひける。

 夏の御方は、このようなあれこれのお孫たちのお世話を羨んで、大将の君の典侍腹のお子を、ぜひにと引き取ってお世話なさる。とてもかわいらしげで、気立ても、年のわりには利発でしっかりしているので、大殿の君もおかわいがりになる。数少ないお子だとお思いであったが、孫は大勢できて、あちらこちらに数多くおなりになったので、今はただ、これらをかわいがり世話なさることで、退屈さを紛らしていらっしゃるのであった。

 右の大殿の参り仕うまつりたまふこと、いにしへよりもまさりて親しく、今は北の方もおとなび果てて、かの昔のかけかけしき筋思ひ離れたまふにや、さるべき折も渡りまうでたまふ。対の上にも御対面ありて、あらまほしく聞こえ交はしたまひけり。

 右の大殿が参上してお仕えなさることは、昔以上に親密になって、今では北の方もすっかり落ち着いたお年となって、あの昔の色めかしい事は思い諦めたのであろうか、適当な機会にはよくお越しになる。対の上ともお会いになって、申し分ない交際をなさっているのであった。

 姫宮のみぞ、同じさまに若くおほどきておはします。女御の君は、今は公ざまに思ひ放ちきこえたまひて、この宮をばいと心苦しく、幼からむ御女のやうに、思ひはぐくみたてまつりたまふ。

 姫宮だけが、同じように若々しくおっとりしていらっしゃる。女御の君は、今は主上にすべてお任せ申し上げなさって、この姫宮をたいそう心に懸けて、幼い娘のように思ってお世話申し上げていらっしゃる。



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