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胡蝶

第二章 玉鬘の物語 初夏の六条院に求婚者たち多く集まる    

4. 右近の感想     

 

本文

現代語訳

 右近も、うち笑みつつ見たてまつりて、「親と聞こえむには、似げなう若くおはしますめり。さし並びたまへらむはしも、あはひめでたしかし」と、思ひゐたり。

 右近も、ほほ笑みながら拝見して、「親と申し上げるには、似合わない若くていらっしゃるようだ。ご夫婦でいらっしゃったほうが、お似合いで素晴しろう」と、思っていた。

 「さらに人の御消息などは、聞こえ伝ふることはべらず。先々も知ろしめし御覧じたる三つ、四つは、引き返し、はしたなめきこえむもいかがとて、御文ばかり取り入れなどしはべるめれど、御返りは、さらに。聞こえさせたまふ折ばかりなむ。それをだに、苦しいことに思いたる」

 「けっして殿方のお手紙などは、お取り次ぎ申したことはございません。以前からご存知で御覧になった三、四通の手紙は、突き返して、失礼申し上げてもどうかと思って、お手紙だけは受け取ったりなど致しておりますようですが、お返事は一向に。お勧めあそばす時だけでございます。それだけでさえ、つらいことに思っていらっしゃいます」

 と聞こゆ。

 と申し上げる。

 「さて、この若やかに結ぼほれたるは誰がぞ。いといたう書いたるけしきかな」

 「ところで、この若々しく結んであるのは誰のだ。たいそう綿々と書いてあるようだな」

 と、ほほ笑みて御覧ずれば、

 と、にっこりして御覧になると、

 「かれは、執念うとどめてまかりにけるにこそ。内の大殿の中将の、このさぶらふみるこをぞ、もとより見知りたまへりける、伝へにてはべりける。また見入るる人もはべらざりしにこそ」

 「あれは、しつこく言って置いて帰ったものです。内の大殿の中将が、ここに仕えているみるこを、以前からご存知だった、その伝てでことずかったのでございます。また他には目を止めるような人はございませんでした」

 と聞こゆれば、

 と申し上げると、

 「いとらうたきことかな。下臈なりとも、かの主たちをば、いかがいとさははしたなめむ。公卿といへど、この人のおぼえに、かならずしも並ぶまじきこそ多かれ。さるなかにも、いとしづまりたる人なり。おのづから思ひあはする世もこそあれ。掲焉にはあらでこそ、言ひ紛らはさめ。見所ある文書きかな」

 「たいそうかわいらしいことだな。身分が低くとも、あの人たちを、どうしてそのように失礼な目に遭わせることができようか。公卿といっても、この人の声望に、必ずしも匹敵するとは限らない人が多いのだ。そうした人の中でも、たいそう沈着な人である。いつかは分かる時が来よう。はっきり言わずに、ごまかしておこう。見事な手紙であるよ」

 など、とみにもうち置きたまはず。

 などと、すぐには下にお置きにならない。



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