野分(のわき)あらすじ
秋好中宮は、秋の草花を、里なる六条院の庭に、今年は特別に植えたが、異常な野分に、すっかり荒された。紫上の庭も同様である。夕霧は、祖母大宮の三条宮から源氏の六条院に見舞に来て、紫上をちらっと見た。その美しさは、全く驚異であった。
源氏の使者をも兼ねて、夕霧は道々、紫上の事を思慕しつつ、三条宮に帰った。三条宮の被害も大きい。祖母大宮は、夕霧を頼りにしている。
夕霧は、早朝、花散里を見舞ってから六条院に廻った。夕霧の咳払いで、源氏と紫上とは、「暁の別れ」などと睦言を語らって起床した。源氏は、夕霧から大宮の状況の報告を受けた。更に、大宮への孝養を夕霧に勧めた。その序に内大臣の性格をも語っている。
夕霧は、源氏の使として秋好中宮の慰問に行った。中宮の女房達は、虫籠を持って庭に下り、虫に露をやったり、撫子などの折れた枝を拾う者もある。夕霧は、中宮に源氏の消息を伝え、知己の女房達にも逢って帰り、復命した。源氏は、然し気掛りなので、中宮を見舞うことにした。夕霧が、風の紛れに昨日紫上を見たかと、源氏は疑念を抱いた。
源氏は明石上をも見舞ってから、玉鬘を訪ねた。源氏は、美しい玉鬘を身近く引寄せて、戯れかかっている。それを、夕霧は竊に覗き見て、驚いた。
源氏は、花散里に立寄り、裁縫や染色を見て感嘆した。あちこちの慰問をした。
夕霧は、明石姫君を訪ね、その乳母に雲井雁と惟光の女への消息を託した。
夕霧は、明石姫君をほのかに見てから、祖母大宮を訪うた。たまたま内大臣の来訪もあった。内大臣は、心にあまる近江君の事を、母大宮に、それとなく語った。