早蕨あらすじ
中君の生活は、春が帰って来ても寂しかった。そんな時は、大君が慕わしく思い出される。その頃、山の阿闍梨が、早蕨や土筆を贈って中君を慰問した。宇治の人々は、大君を追憶し、大君に対する薫の心情が深刻であった事を思って、薫の親切を痛感する。
薫は、匂宮を訪ねて、宇治の物語をした。匂宮は、薫と中君との間を疑って、梅の花の和歌の贈答をしたり、大君の思い出や打解けた話で、夜が更けて行った。匂宮は、その際、中君を京に移す事を薫に語った。
中君は、二条院に移る事に定まった。引越の準備
備万端は、薫が取り計らった。二月六日の早朝、薫は中君を訪ね、弁尼にも逢った。中君には、強いて面接して話した。中君は、引越に積極的な意志はない。弁尼は、宇治に残る事となった。残った女房達の事を、薫は、自分の荘園の者どもに頼んだ。弁尼と、世間の無常をしみじみと語って、薫は京に帰った。
二月七日の夕月夜に、中君は宇治を離れて、匂宮の二条院に移った。匂宮は喜んで迎えた。薫の失望は言うまでもなく大きい。
夕霧は、六君の裳着の式を盛大に行った。その婿にと、かねてから匂宮を目ざしていた。然るに、中君引越の一件で、それが失敗したので、薫を婿にと考え直した。けれども、薫にはその気がない。ましてや、失望のこの頃、六君などを考える、心の余裕は全くない。薫は、二条院に中君を訪ねて行く。それに対して、匂宮には、不安が消えない。