75. ありがたきもの
本文 |
現代語訳 |
語彙 |
ありがたきもの 舅にほめらるる婿。また、姑に思はるる嫁の君。毛のよく抜くるしろがねの毛抜。主そしらぬ従者。 |
めったにないもの。舅(しゅうと)にほめられる婿。また、姑(しゅうとめ)によく思われる嫁。毛が良く抜ける銀の毛抜き。主君を悪く言わない従者。 |
そしる【謗る】【誹る】【譏る】…【他ラ四】悪く言う。非難する。けなす。 |
つゆの癖なき。かたち・心・ありさますぐれ、世に経る程、いささかのきずなき。おなじ所に住む人の、かたみに恥ぢかはし、いささかのひまなく用意したりと思ふが、つひに見えぬこそ難けれ。 |
一点の癖もない人。容貌・性質・態度ともに立派で、世渡りするのにいささかの欠点もない人。同じ所に住む人が、互いに慎しみ合い、少しの隙もなく気を配っていると思う人が、最後まで心底見せない、それこそめったにないものだ。 |
|
物語・集など書き寫すに、本に墨つけぬ。よき草子などは、いみじう心して書けど、かならずこそきたなげになるめれ。 |
物語や元本などを書き写すのに、本に印をつけぬこと。よい冊子などは、ひどく注意して書くけれど、必ずと言っていいほど汚くなりそうだ。 |
|
をとこ、女をばいはじ、女どちも、契りふかくて語らふ人の、末までなかよき人かたし。 |
男女関係は今更いうまい、女同志でも、深い関係で睦び合う人々が、終りまで仲のよいことはめったにない。 |
|
2 婿…男が女の家に通うのが当時の結婚の一般。その後、女が男の家に住むこともあった。
3 毛抜…眉毛を抜く習慣から毛抜が常用された。普通は鉄製。銀製のものは外見はよいが力がない。